邪悪な職場

葛城ミサトさんのような制服に身を包んだ女性が甲板をウサギのぴょんぴょん跳び*1で出勤してくる。巨大な海底基地のような戦艦だが、軍の一部ではないらしい。一般の人類に害なす目的を持った謎の組織で、全容を把握している者は内部にすら1人もいないかもしれない。生物兵器や巨大ロボットなどの邪悪な計画が進行しているらしい。大きなプールもある。もともと込み入った物語であることに加えて、目が覚めたときにはすでにごく断片的にしか内容を覚えていなかったので、ここでもぼんやりした記述しかできないのが残念だ。この組織の複雑怪奇さは、仕出し弁当のおすそ分けが誰のもとに行き、誰のもとに行かないか、といった点にも反映される。皮膚疾患のように見える哀れな実験体が、実は、組織の幹部だったりもする。その男は立ち上がって、ぼくらがいる部屋から出ると、外から鍵をかけてしまう。そのように不明瞭な人事システムで、染谷将太のような顔をした青年パイロットは、ある日突然、点呼のときに無視されてしまい、憤慨して抗議している。組織の秘密の何を知り、何を知らないでいるか。どの立ち位置を選択するのか。さりげない解雇の理由は、たいてい、そのようなものだ。パイロットというのはこの組織ではバイトのような周縁的な存在なので、なおさらそういう扱いになる。
この戦いにおいては古来の日本神道の力も重要な要素となっている。重力場を狂わせるか何かする大規模兵器が上空から街に投下されるとき、それに対抗する儀式が、一見無関係に見える別の場所で執り行われている。縁側に大きく開けた板敷の広間で、神主は何かを待ち受けている。これを演じるのは木村拓哉なので、やたらかっこいい役どころになっており、衣装も派手だ。その「何か」は、水平線の向こうから押し寄せてくる光輝く大量の海の幸だった。
定刻になると、甲板をウサギのぴょんぴょん跳びで退勤する。そういう決まりなので、ぼくのようなおっさんもやはり、ぴょんぴょんする。

*1:しゃがんだ状態で両足をそろえて小さく跳びながら前進するいわゆる「うさぎ跳び」ではなく、もっと軽快な動き。