付き合いはじめのころの夢

女の子と付き合いはじめの夢を見た。

小柄な、かわいい子で、今思えばぼくが知っている人のなかで一番近いのは、院生のころにブラジル音楽サークルを立ち上げようとして集まった女子2名のうち学内の学部1年生のほうの子だ。でも、その子よりは活発でよくしゃべる。

大学か高校の学園生活の場面がいくつかあったようだ。その子はぼくのことを「先輩」と呼んでいた。

「情報」の授業開始前、隣の席同士で何か会話しながらグーグル検索などするのだが、その画面が大教室の前の画面に映し出されてしまう。その設定を解除する仕方を2人とも知らない。だけど、誰が映しているのかはどうせ誰にもわからないから、別にいいかと思って、そのままデートの相談などする。

実は地下アイドルか何かなのか、それとも、単に習い事の発表なのか、会場内に複数のステージが設置してあるタイプの野外イベントで、彼女はグループの1人として歌を歌う。うまく歌えるか本人も心配していたが、当日、観客の人ごみに紛れて聞いていると、歌っているその曲のメロディーは「そばかす」の丸パクリだった。

「映画祭」に2人で来ていて、元彼女に遭遇する。「しかしこんなにブサイクだったっけ」と思ったが、よく考えたら元彼女じゃなくで高校の元同級生のデブ男だった。(元彼女は、あらためて別の場面で登場し、その小柄な子とどちらが好きなのか、なんとなく選択を迫られるような状況になった)。映画を一本観て、ちょっと早いけどお昼にしようか、となって、入店し、せっかくなのでその男も一緒に、「じゃあ、3名で」と告げたらその男の連れの女性が来たので「やっぱり4名で」と言ってカウンター席に通されたところで目が覚めたような気がする。ちらっとしか見えなかったけど、その女性は意外にも美人だった。

「好き」とか「付き合おう」とか口に出して言うこともなくキスもしていないけど、知り合い始めから、会話がはずんで、自然と一緒に行動することが多くなって、なんとなく体を触られたり頼られたりするようになって――と、今まで生きてきたなかで似たような場面はいろいろ覚えがあるものの、ここまでかわいい子にここまで順調にモテたことは、実際には一度もない。さすがに夢だけのことはある。目が覚めて、まず、「おれ、実はこういう小柄なかわいいタイプの子も好きなのかも」という感想を持ち、また、男女交際とは良いものなのだと再認識した。もっとがんばってモテる努力をしてみようという気になる(例えば、定職に就くとか)。

細部をちゃんと思い出せないのが残念なくらいの夢だった。その女の子は頭がいいらしく、言うことにしゃれが利いていて、本当にぼくたちは気が合うようだった。というか、「もしかしてぼくたちはものすごく相性がいいんじゃないのか」ということを実感し始める頃合いの、そんなうれし恥ずかしな日々だった。その感覚はくだんの元彼女に似ていなくもないが、それをもっとシュッとした細身な感じにしたものとでもいうか。

なかの一場面で、広々した丘のうえの住宅街の、何車線もある道路のわきのベンチに座っている。すると、右手の地平線のむこうのほうから、あるいはその上空から、世界を滅亡させる何か、隕石か、怪獣か、そんなものがやってくる。映画の話かという気もするが、現実に起こっていることなのかもしれない。そうこうするうちに、実際にそれは来てしまう。まっくらな「無」のなかで、ぼくらは強く抱きしめあう。